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カルチャーショック - 中国人留学生のトリセツ

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カルチャーショック



カルチャーショック(Culture shock)とは、異文化に見たり触れたりした際、習慣・考え方・異文化の実像について、母国文化の常識と大幅に掛け離れていたり、自身が学校教育などで習得したその異文化に関する知識・情報と乖離しているため、心理的にショックを受けたり戸惑うことである。例えば、言葉が全く通じない、現地の人間について自分が学校の授業で教わったイメージと実像がかけ離れている、など。

外国や国内問わずに起こりえるものであり、例えば、外国の観光地や大都市に赴いた日本人が現地の実際の姿を実際に見てカルチャーショックを受けたり、逆に外国人が日本に来て自身が知識として得ていた日本に対するイメージや日本人像とその実像のギャップにカルチャーショックを覚えるということも起き得る。

逆カルチャーショックという言葉もある。これは地元に戻った際に今まで馴染んでいたはずの文化・価値観や母国の政治・教育に疑問や抵抗感が沸いてしまうことである。外国留学やビジネスでの長期滞在から帰って来た人に見られる。

カルチャーショックの特徴 anchor.png

留学生は新しい環境で生活を始めると、多くの場合、カルチャーショックに遭遇する。カルチャーショックという言葉は、アメリカの文化人類学者のオバーグ(Oberg)によって初めて用いられた。
カルチャーショックとは、異質な文化のもとで、習慣や身振りや言語など「我々が親しんでいる社会的交渉のサインやシンボルをすべて失う結果、生じる不安により引き起こされるもの」であるとし、

  1. 心理的適応のための努力による過度の緊張
  2. 友人、地位、職業、所有物に関する喪失感と剥奪された感情
  3. 新しい文化の成員から拒否されたり、拒否したりすること
  4. 役割、役割期待、価値、感情、自我同一性の混乱
  5. 文化差に気づいた後の驚き、不安、さらには嫌悪と憤り
  6. 新環境に対処できないことによる無能感

の6つの特徴をあげている。
このようなカルチャーショックは、日本に来た中国人留学生も、多かれ少なかれ経験するものである。オバーグは、カルチャーショックは異文化状況で起こる文化ストレスに適応するための過程であり、その積極的な意義を認めている。その意義を認識しつつ、カルチャーショックにどう対処するかが、留学生のその後の適応を左右する。

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カルチャーショックの段階 anchor.png

カルチャーショックには、いくつかの段階(ステージ)があるとされている。すべての人が、このモデルどおりに進行するわけではないが、「適応プロセスは一直線に進むのではない」ということが重要である。

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留学準備期 anchor.png

留学をする決心をしてから、出発までの時期。

情報を集め、奨学金を探し、入学書類を揃える。社会人であれば、それまでの仕事を辞めたり中断したりするため、引き継ぎをする。
出発直前になると、荷物を詰めたり、チケットを確認したりする。果たして日本という異国でうまくやっていけるのか、期待と同時に、これからの長い外国生活を思い、不安になる。家族や友人、恋人ともしばしのお別れ。あるいは、バタバタと毎日が過ぎ、何も考えられないうちに飛行機に乗る、という人も多いだろう。
そして、機上の人となり、地方の人なら、ほぼ丸一日かけ、大量の荷物を引きずりながら、ヘトヘトになって日本に到着する。

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ハネムーン期 anchor.png

日本到着直後から数週間の時期。
見るものすべてが新しく映る。見慣れない食べ物、聞き慣れない言葉。
近所のスーパーなどには行けるようになる。
大学へ行く交通機関は何か?
先生にはどう挨拶するのか?
手土産はいるのか?
どうやって連絡をとるのか?
いつから授業は始まるのか?
緊張も強いが、「新しいところに来た」というワクワクした感じが続く。

ハネムーン期の特徴は、物事の「良い側面」が強調されることだ。
日本人は皆親切だし、先生方も優しい。日本を選んで良かったと思いたい気持ちが働く。気分はいわゆる「ハイ」な状態で、自分が元気なのか疲れているのかよく分からない。つまり「自己モニター」がうまく機能しない。元気だと思っていたら、いきなり疲れ果てて動けなくなる、というような体調の不良も現れる。
気候の違いなどもあり、かなり疲れているはずだが、興奮してよく眠れないこともある。

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敵対期 anchor.png

日本での生活に慣れてきて、周りを見回す余裕が出てくる。しかし、ハネムーン期の疲れもあって、気分的には良くない。そして、今度は日本の悪い部分だけが目についてくる。
日本人は親切だと思っていたが、いつまでたっても「親切」なだけで、ちっとも親しくなれない。
日本語も挨拶程度はいいが、話していると相手の言ってることが理解できない。方言も学生言葉もよく分からない。自信がなくなってくる。果たして、日本でやっていけるのかと不安になってくる。そもそも、こんなところに来たのが間違いだったのではないか。何で日本にいるのだろう。
帰りたい。中国の家族や友人にメールをしたり、電話をする。ホームシックが続く。

この時期には、「不満を言う」ことは適応にとって非常に重要だ。留学生同士が集まると、しばしば日本の悪口が出てくる。しかし、これは自然な適応プロセスの一部である。どこの国でも、その国の留学生が集まると、ホスト国の悪口は出るものだ。もし日本人の前で「日本人なんか大嫌いだ」と留学生が言ったのなら、それは言った相手のことを「ホンネを言える相手」として信頼し始めているというサインである。そういうときは「日本に来て結構つらいんだ」と返せばいい。

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適応期 anchor.png

感情的に落ち着いてきて、日本の良い部分も悪い部分も両方が見えてくる。
日本語にも慣れ、勉強もスムーズに運び出す。徐々に新しい友達も増え、不満に思っていた日本の習慣や人間関係も、少しずつ理解できるようになる。
生活に不便は感じなくなってくるが、事故や病気、その他の文化的な問題がときどきおこると、また落ち込んで「敵対期」の様相が繰り返されたりする。
5年を超えるような長期間の留学になると、今度は「自分は何人なのか?」というアイデンティティの問題も出てくる。今、よく分かっているのは日本のことであり、中国に関する情報は、どんどん古くなっていく。一時帰国しても、中国の若者文化はさっぱり分からないし、中国で流行っている歌も歌えない、という状況になる。

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帰国準備期 anchor.png

帰国が近づくと、勉学をやり終えた嬉しさはもちろんあるが、同時に寂しい気持ちや不安も出てくる。日本でできた友人とも別れなければならない。日本人の恋人がいる人であれば、恋人とも超遠距離恋愛になる可能性もある。日本の習慣がすっかり身に付いた場合には、帰国してまた元の文化に適応できるのかと不安になる。
帰国してからの自分が学んだことに対する評価や就職先、家族で来日した人や日本人と結婚した人なら、配偶者の仕事や日本人配偶者が中国でうまくやっていけるのか、あるいは、子供がうまく中国語を話せるようになるかなど、たくさんの心配事が出てくる。
そして、飛行機に乗り、中国に帰るのだが、そこではまた「リ・エントリー(re-entry:再入国)ショック」と呼ばれる、次のプロセスが待っている。

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リ・エントリー期 anchor.png

帰国後には、「リ・エントリーショック」が起こると言われる。
留学の影響は、帰国したからといって終わるものではない。元の文化に再適応するという問題が残っている。何年もブランクがある場合には、日本に来たときと同じ適応プロセスを繰り返すことになる。
苦労して留学し、苦労をして学位を取って帰ってきても、周りの人は「おかえりなさい」という程度。本当の苦労はなかなか分かってもらえない。日本での自分の大事な経験が、他の人にじっくり語られることもなく、徐々に風化していく寂しさを味わう。

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カルチャーショックモデルの意味 anchor.png

以上のプロセスは、もちろん一つのモデル(理論)である。全ての人が皆このような経験をするわけではない。
しかし、それでも結構役に立つモデルである。それは「適応というのは、直線的に進んでいくものではない」ということを示しているからだ。少し慣れて、もう大丈夫だと思ったら、また不調になる、というような波があり、一つ一つを乗り越えることで、少しずつ適応は進んでいく。
「不満を言う」ということは、ホンネの付き合いの第一歩である。不満を言った結果、かえって人間関係がうまくいかなくなり、帰国してしまう人も中には出てくるだろう。そういう意味で、それを乗り越えられるかどうか試される時期なのだ。そして、多くの留学生は、「日本人は嫌いだ」とか「日本に来ないほうが良かったのだろうか」などとブツブツ言いながら、徐々に日本に適応していくのだ。


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